研究課題名
感染症病理解剖症例レジストリ構築のための課題抽出と解決方法の検討
研究の目的と方法
感染症にかかったときに患者の体内で何が起こっているのかを解明するためには、その感染症で亡くなられた方のご遺体を解剖して詳しく調べることが非常に重要です。新型コロナウイルス感染症パンデミックの際にも、世界中で解剖が行われました。このおかげで病気の解明や治療薬の開発、さらには感染対策が進みました。
一方で、日本では安全に解剖を行い、その結果を共有する仕組みがなかったため、限られた数の解剖から得られた結果を社会に還元することが難しい状況でした。
私たちはこの問題を解決するために、今後新しい感染症が流行した際に解剖結果を共有・蓄積できる「感染症病理解剖症例レジストリ」を構築しようと考えました。しかし、効果的なレジストリを計画するためには、解剖で得られる情報をどのように、どこから収集すればよいのかを具体的に検討する必要があります。
そこで今回、これまでに様々な病院で実施された感染症が関与して亡くなった方の解剖症例について、実際に情報を集め、どのようなことが分かるのかを検証し、レジストリの構築に役立てることにしました。
具体的には、過去30年間に病院で行われた解剖の中から、感染症が関係したと考えられる症例を選び、その解剖で得られた所見を情報として収集します。さらに、様々な病院で集められた感染症病理解剖症例の情報を集約し、どのようなことが明らかになるのかを考察します。その結果、収集すべき情報や改善点を見つけ出し、最終的に今後の感染症流行時に対応できるレジストリを設計します。
この研究に参加いただくことは、今後の感染症流行時に備えた日本の解剖体制の整備に協力することになります。このレジストリが構築され実用化されれば、新しい感染症が流行した際にも迅速に情報を収集し、日本国内での治療薬開発や感染防護対策を迅速に行うことができると考えられます。
本研究では個人を特定する情報は使用しません。研究成果は学会や学術誌で発表しますが、その際にも個人が特定できる情報が公表されることは一切ありません。
研究の対象者及び対象期間
1993年から2023年までに東京大学医学部附属病院で病理解剖を受けた感染症が関与して亡くなった方。
研究期間
令和5年(2023年)12 月 〜 令和10年(2028 年)3 月 31 日
研究に用いる試料・情報
手術あるいは病理解剖された肺組織の組織の残余検体(感染研に送付時に個人が特定されないように匿名化されており、年齢、性別、基礎疾患、臨床経過などを含みます。)と症例情報(居住市町村、感染に関する疫学情報、その他の病原体検査結果、臨床情報、臨床検査結果、病理解剖所見を含みます。)
研究組織
国立感染症研究所(所長 脇田隆字、研究代表機関):
感染病理部 部長 鈴木忠樹
東京大学大学院医学系研究科(研究科長 南学正臣):
人体病理学・病理診断学 教授 牛久哲男
お問い合わせ
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
研究の対象となっている方は、ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますので、研究代表機関連絡先までお申出下さい。また、情報が本研究に用いられることについて、患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、東京大学の研究責任者を通じてお申出ください(連絡先が分からない場合は下記の研究代表者にお問い合わせください)。試料・情報が研究に用いられることにご了承いただけない場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。なお、成果の発表後は、研究対象からの除外に応じることができません。
研究代表機関連絡先
国立感染症研究所 感染病理部 部長
鈴木 忠樹(研究代表者)TEL: 03-5285-1111 FAX: 03-5285-1189
研究分担機関連絡先
東京大学大学院医学系研究科 人体病理学・病理診断学 教授
牛久 哲男(研究分担者)TEL: 03-5841-3341 FAX: 03-3815-8379