がん転移促進因子ポドプラニン

主な担当メンバー:国田朱子

ポドプラニンは扁平上皮癌(肺、食道、子宮頸部等)、中皮腫、脳腫瘍、など多くのがん細胞表面で高発現する膜タンパク質でありがんの浸潤に関与する。これまでに私達はポドプラニンが血小板凝集を介してがん転移を促進させる事を見出した(1)。またポドプラニンは脳腫瘍や骨肉腫において高発現し、高い血小板凝集能を有する事を報告した(2)。さらに新規抗ポドプラニン抗体が、細胞傷害活性を通じて高い抗腫瘍効果を誘導し転移を抑制することを見出し、がん転移治療標的としてポドプラニンが有用である事を示した(3)。一方ポドプラニンは腫瘍浸潤先端部に限局して発現し腫瘍集団浸潤に寄与すると考えられる。この機序を解明するため腫瘍浸潤先端部および腫瘍中心部、正常部組織の遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析した。その結果、腫瘍浸潤先端部においてインターフェロン応答遺伝子の発現上昇が見られ、複数のがん細胞株においてIFNγ, TGFβ, TNFαによりポドプラニンの発現が上昇した(4)。ポドプラニン陽性細胞は間質の白血球やマクロファージ、CD8陽性T細胞に近接しておりこれら間質由来の因子により発現が誘導される事が示唆された(図)。

Figure 4Aが2018年5月号のAJP (vol 188)の表紙に掲載された。
緑:podoplaninpodoplanin, 赤:CD45(白血球), 黄:CD8(T細胞), オレンジ:F4/80(マクロファージ)

<参考文献>

  1. Kunita A, Kashima TG, Morishita Y, Fukayama M, Kato Y, Tsuruo T, Fujita N. The platelet aggregation-inducing factor aggrus/podoplanin promotes pulmonary metastasis. Am J Pathol. 170:1337-1347 (2007).
  2. Kunita A, Kashima TG, Ohazama A, Grigoriadis AE, Fukayama M. Podoplanin is regulated by AP-1 and promotes platelet aggregation and cell migration in osteosarcoma. Am J Pathol. 179:1041-1049 (2011).
  3. AMEDプレスリリース「がん転移に対する新規治療法の開発―次世代型抗体開発技術キャスマブ法の応用」
    https://www.amed.go.jp/news/release_20150929.html
  4. Kunita A, Baeriswyl V, Meda C, Cabuy E, Takeshita K, Giraudo E, Wicki A, Fukayama M, Christofori G. Inflammatory Cytokines Induce Podoplanin Expression at the Tumor Invasive Front. Am J Pathol. 2018 May;188(5):1276-1288.